食べること

「アルバイト」をはじめてやったのは大学生から。高校の時はなんだかんだでその余裕もなく、でもいざやるなら、食べ物にまつわるのがいいな、と始めたのがイトーヨーカドーに入ってるクレープ屋。相当地元だったら、中学のときの同級生カップルが来たりして、こっそり具をおまけしたりしていた。
次にやったのは、ナンバ駅構内の弁当と朝定食と丼の小さな店。3年次になり教職をとらないと学費を払えと親に脅かされ、しかも教職の授業は夕方遅くからだったから、学校が終わってから働くのが困難になった。で、朝7時から働ける店を選んだ。駅構内と改札外と両面に開いている店で、構内側で弁当(できあがったもの)を売り、改札の外の店舗で朝は朝の定食を出す。そこは10時を過ぎて、夜の閉店までは様々な丼を出す店だった。朝イチの授業はもうそのころなかったから、通勤客が落ちついて丼の仕込みをしてから、平日は9時半まで働いてから大学に行く。土日は7時から17時とかいうシフトも多かった。小さな店で、個性的なメンバーばかりだったけど、楽しかったな。卒業まで働きたかったけど、駅構内の改修で店が無くなることになった。みんなで盛大に打ち上げをやって解散した。
最後にやったのは、同じナンバ駅にあるキリンシティの厨房だった。シェフもいるから、下ごしらえがほとんどだったけど、「まかない作れ」の指令をはじめて受けた時は、本当に緊張した。今だったら、もっとうまくできると、ふっと思い出したりもする。
そして、卒業して最初に勤めたのは、マヨネーズ会社だった。


そんなことを思い出したりさせたのは、「食堂かたつむり@小川糸」を読んだから。食堂かたつむりタイトルにひかれ、各所のレビューにひかれてたけど、つい先日の水曜日までは手に取らず。帯にマサムネさんのレビューが入ってたりしたのは、まあ、プラス要因?(笑)。読み始めて、ぐいぐい、やっぱり自分の好きなフィールドものだと思ってしまった。木曜日、前日が飲みだったから弁当作れず、会社そばの洋食屋で時間を惜しんで読みながら食べて、涙ぐむ。確かに、おとぎ話的な部分はあるけど、食べ物がからむとどうしても通常じゃいられなくなってしまうのだ。「キッチン@吉本ばなな」をはじめて読んだ時から、そう。これはもう、条件反射だな。


料理を作っていく、それに携わる仕事は憧れる。だけどできないのは、料理を仕事にする根性がないからだ。「キッチン」を読んだときに心にしみついた内容が「家庭料理と、プロのものは違う」ということ。この「食堂かたつむり」にもその要素が含まれていて、久しぶりにフッとそれを思い出した。気持ちがダレると結果が直結する、そのわずかな差。全力でやることは、技術と経験だけではカバーできないこともある。それでお金をかせぐってことだけではない、何か精神的なものに近いものかもしれない。なんとなーく、音楽にも似ているのじゃないかな、って思ったりする。やっぱり、人間の「欲」に接するジャンルだから。そんなことを考えつつ、できるかぎり、気持ちをこめて日々ごはんを作ろうと思った。じっさい、毎日のことだから、全力疾走はできないけわけだが、ほんの一瞬でもね。食べるときのことを考えて、自分とたべる人とのことを思って丁寧にすると違ってくるかな、と。


でもって、本日はみんちゃんがまだ帰って来てないので(もう23時すぎ)、一人で先に食べた晩ごはん。ピーマンの肉詰めと焼きなす、卵とキュウリのサラダでした。ごちそうさま。